弁護士上田孝治の“ 法律あれこれBLOG ”

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元妻を殺人容疑で逮捕=「紀州のドン・ファン」死亡―体内から覚せい剤・和歌山県警(2021年4月28日のニュース)

 @niftyニュースによれば、「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、資産家として知られていた野崎幸助さんを、元妻の須藤早貴容疑者が、急性覚せい剤中毒にさせて殺害した疑いで逮捕された、とのことです。

《野崎さんの遺産相続は?》
 まだ逮捕された段階ですので、殺人容疑の真相は分かりませんが、この件を「相続」という視点で分析してみます。
 亡くなった野崎さんに子どもや両親はいなかったようですが、2020年5月には、野崎さんの兄弟姉妹が、「全ての遺産を田辺市に寄付する」とした遺言書は無効として、和歌山地裁に提訴した、との報道がされています。
 したがいまして、野崎さんの相続に関する利害関係者としては、①今回逮捕された野崎さんの元妻、②野崎さんの兄弟姉妹、③遺産を寄付するとされた田辺市の三者になります。

《ケースⅠ 元妻が、殺人罪で刑に処せられなかった場合》
 まず、元妻が、殺人罪で起訴されなかったり、起訴されても無罪になったり、有罪でも執行猶予判決になって執行猶予期間が経過した場合(猶予期間の経過によって、刑の言渡しは効力を失うことになります。殺人罪であれば現実には考えられませんが・・・)を考えます。
 この場合には、元妻が、殺人罪で刑に処せられなかったということになりますので、「相続欠格」の問題は生じず、元妻は、野崎さんの相続人として扱われます。
 その結果、仮に遺言が「有効」と判断されれば、田辺市が全ての遺産を受け取ることができますが、元妻は、自分には遺留分(いりゅうぶん)があると言って、田辺市に対して、遺産の半分に相当する金銭を支払うように求めることができます。他方で、兄弟姉妹には、法律上、遺留分は認められていません(遺言が優先されます)ので、何ももらえないということになります。
 また、仮に遺言が「無効」と判断されれば、遺言がないのと同じ扱いになり、田辺市は何ももらうことはできず、法定相続によることになりますので、法定相続人(元妻と兄弟姉妹)のうち、元妻が4分の3、兄弟姉妹が(全体で)4分の1の相続分になります。

《ケースⅡ 元妻が、殺人罪で刑に処せられた場合》
 では、元妻が、殺人罪で起訴されて有罪となり、実刑判決などを受けて有罪判決が確定した場合はどうなるかですが、この場合、元妻は、「相続欠格」ということになって、相続資格を失います。もちろん、遺留分も主張できなくなります。
 その結果、仮に遺言が「有効」と判断されれば、田辺市が全ての遺産を受け取ることができ、元妻は、何も求めることができません。他方で、兄弟姉妹に遺留分がないことは、元妻が刑に処せられたとしても変わりませんので、遺言が優先され、兄弟姉妹は何ももらえないということになります。
 また、仮に遺言が「無効」と判断されれば、遺言がないのと同じ扱いになりますので、田辺市は何ももらうことはできず、法定相続によることになりますので、法定相続人である兄弟姉妹が遺産をすべて相続できることになります。
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Author : 上田 孝治(Koji UEDA)

‣2003年 弁護士登録
‣神戸さきがけ法律事務所 代表弁護士
‣宅建試験対策講座 講師
‣芦屋市都市計画審議会 委員
‣国民生活センター 客員講師
‣兵庫県サイバー犯罪対策ネットワーク 特別会員

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