弁護士上田孝治の“ 法律あれこれBLOG ”

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プラダのサイトで価格誤表示 財布913円、スニーカー1045円など“格安”価格に プラダは「対応中」(2020年11月11日のニュース)

 exciteニュースによれば、プラダ公式オンラインストアにて、全ての商品の値段が格安になる不具合が発生し、すでに注文が寄せられているが、誤った価格での提供となるため、全てキャンセル対応となる、とのことです。

《インターネット通販における売買契約の成立》
 まず、インターネット通販においては、基本的に、サイトへの商品の掲載は「広告」にあたり、広告を見た消費者が商品購入の「申込」を行います。申込を受けて、ネット通販業者が「承諾」をすれば商品の売買契約が成立します。売買契約が成立すれば、ネット通販業者は売主として商品を買主に引き渡す義務を負います。

《価格の誤表記と錯誤による契約の取消》
 では、売買契約が「成立した後」に、サイトの価格表記が誤っていたことを理由に、ネット通販業者は、契約をご破算にして商品を引き渡さないことができるのでしょうか。
 このような場合、ネット通販業者は、価格表示を間違えたことが、民法の「錯誤」(いわゆる勘違い)にあたるとして、売買契約を取り消すことが考えられます。
 もっとも、錯誤を理由とする契約の取消は、勘違いした人(この場合はネット通販業者)に「重大な過失」がある場合(要するに、あまりにもおっちょこちょいな勘違いの場合)は、契約の相手方(この場合は買主)の保護の観点から、原則としてできません。そして、ネット通販業者がサイト上の価格に誤表記をするということは、基本的にはネット通販業者に「重大な過失」ありということになりますので、ネット通販業者は取消ができないことになりそうです。
 しかし、「重大な過失」がある場合でも、ネット通販業者が勘違いをしていることについて、契約の相手方である買主が、①気づいていたか、②重大な過失で気づけなかった場合には、買主を保護する必要はありませんので、取消ができることになります。本件のように、一見して格安な価格の表示であれば、買主も表記の誤りに簡単に気づくことができるはずですので、少なくとも買主に重大な過失があることになり、結局、ネット通販業者は錯誤による取消ができることになります。

《本件の分析》
 本件では、消費者からの注文(購入申込)に対して、プラダ側はまだ承諾しているわけではなく、売買契約自体がまだ成立していません。
 したがって、錯誤による契約の取消を云々する前に、そもそも、プラダ側は売買契約に基づく商品の引き渡し義務を負っていないことになります。



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Author : 上田 孝治(Koji UEDA)

‣2003年 弁護士登録
‣神戸さきがけ法律事務所 代表弁護士
‣宅建試験対策講座 講師
‣芦屋市都市計画審議会 委員
‣国民生活センター 客員講師
‣兵庫県サイバー犯罪対策ネットワーク 特別会員

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