弁護士上田孝治の“ 法律あれこれBLOG ”

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令和2(2020)年度 宅建試験「問42」は正解肢が2つあるのか??

 令和2(2020)年度宅建試験の問42(宅建業法の担保責任についての特約の制限に関する規定)は、誤っている肢がどれかという問題ですが、正解肢(=誤っている肢)が2つあるのではないかということで一部で議論になっているようです。具体的には、明らかに誤っている肢4だけでなく、肢1も誤っているのではないかという疑義です。

 さて、いきなりですが、私のあくまでも個人的な見解による結論から言えば、肢1も誤っているので、問42は正解肢が2つあることになるように思います(多分・・・)。

《問42の肢1》
 まず、肝心の問42の肢1を見てみます。

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として締結する売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが宅地建物取引業者ではないBとの間で締結する宅地の売買契約において、当該宅地の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を負う期間をBがその不適合を知った時から2年とする特約を定めた場合、この特約は有効である。

《問42に関係する条文》
 次に、この問42の肢1を解くのに必要な条文(改正後のもの)を以下に引用しておきます。
 ①民法566条本文
  「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。」
 ②宅建業法40条
 「1 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
  2 前項の規定に反する特約は、無効とする。」

《改正前の民法・宅建業法 ~「責任追及期間」としての期間制限》
 改正前の民法では、売主に対する瑕疵担保責任の追及(具体的には、「○○という不具合があるので、△△円の損害賠償請求をします」などと売主に対してはっきりと告げること)を、買主が瑕疵に気づいてから1年以内(除斥期間)にしなければならないとされていました(これによって、損害賠償請求権などが保存されることになるので、「権利保存期間」と呼ばれます。)。また、この1年とは別に、買主が目的物の引渡を受けたときから10年の、一般的な消滅時効にかかるとされていました。
 要するに、改正前民法の下では、買主が瑕疵に気づいてから1年以内に「責任追及」をすることによって、損害賠償請求権などを、引渡から10年の期間内は行使できるということになります。 
 この改正前民法の定める期間について、改正前の宅建業法40条では、「引渡の日から2年以上となる特約」の例外だけを認め、その他の買主に不利な特約を無効としています。そのため、宅建実務では、「引渡の日から2年間に限って瑕疵担保責任を負う」というような2年限り特約(これは「有効」な特約です。)が設けられていました。
 要するに、改正前の民法・宅建業法の下では、2年限り特約がある場合、引渡の日から2年以内に瑕疵担保責任の追及をして権利を保存することによって、損害賠償請求権などを引渡から10年の消滅時効期間内は行使できるということになっていました。

《改正後の民法・宅建業法 ~「通知期間」としての期間制限》
 改正後の民法では、売主の契約不適合責任に関して、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に「通知」(具体的には、「○○という不具合がある」などという事実を売主に告げること)しなければならず、これによって損害賠償請求権などが保存されることになります(権利保存期間)。また、この1年とは別に、買主が不適合に気づいてから5年もしくは目的物の引渡を受けたときから10年の、一般的な消滅時効にかかることになります。
 要するに、改正後の民法の下では、買主が不適合に気づいてから1年以内に「不適合の事実の通知」をすることによって、損害賠償請求権などを、不適合に気づいてから5年もしくは引渡から10年の期間内は行使できるということになります。 
 この改正後民法の定める期間について、改正後の宅建業法40条では、「引渡の日から2年以上となる特約」の例外だけを認め、その他の買主に不利な特約を無効としています。この2年以上の特約の例外自体は改正前後で変わっていませんが、その元となる「民法566条に規定する期間」が、「責任追及期間」から「通知期間」に変わっていることが実は大きなポイントです!
 「通知期間」に変わったことによって、従来の宅建実務で用いられていた「引渡の日から2年間に限って契約不適合責任を負う」というような2年限り特約は、宅建業法40条2項によって無効となります。もし有効な規定にしたければ、「買主が、引渡のときから2年以内に不適合の事実を売主に通知した場合に限り、売主は契約不適合責任を負う」などとする必要があります(これは、実務的にも重要なポイントです。)。

《問42の肢1をどう考えるか》
 肢1は、「不適合を担保すべき責任を負う期間をBがその不適合を知った時から2年とする特約」を有効としています。
 この点、改正後の宅建業法で有効とされるのは、①通知期間(権利保存期間)を、②引渡から、③2年以上とする特約だけですので、それ以外の特約で改正民法の規定よりも買主に不利な特約は無効になります。
 ところが、この肢1は、「不適合を担保すべき責任を負う期間」を短くする特約になっており、これは、権利保存のための「通知期間」ではなく、「責任追及期間」そのものを短くする内容と言えます。
 したがって、この特約は、一般的な消滅時効(買主が気づいてから5年は売主は責任を負う)と比べて買主に不利になる面があり、無効となると思われ、肢1は誤っている肢になるのではないでしょうか。

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My profile

Author : 上田 孝治(Koji UEDA)

‣2003年 弁護士登録
‣神戸さきがけ法律事務所 代表弁護士
‣宅建試験対策講座 講師
‣芦屋市都市計画審議会 委員
‣国民生活センター 客員講師
‣兵庫県サイバー犯罪対策ネットワーク 特別会員

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