2020
May
30
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《宅建試験対策14》債務者の抗弁(債権譲渡)に関する民法改正
≪改正されたポイント≫
a)債権譲渡があった場合、債務者は、譲渡に直接関わっていないわけですから、債権譲渡の対抗要件が備わるまで(通知や承諾まで)に譲渡人に対して主張できた内容(抗弁)を、譲受人に対しても同じように主張できて当然のはずです。
ところが、改正前は、この例外として、債権譲渡について、債務者が「異議なき承諾」をした場合、債務者は譲受人に対して抗弁を主張できないというルールがありました。
しかしながら、単に債務者が何も言わずに承諾した(異議なき承諾)というだけで、抗弁を主張できなくなるのは、債務者がかわいそうということで、この「異議なき承諾」の例外ルールは廃止されました。その結果、債務者は、譲渡通知の場合でも承諾の場合でも、対抗要件が備わるまでに生じた抗弁を譲受人に主張できることになりました。
b)債権譲渡があった場合、債務者が譲渡人に対して有している反対債権を使って、譲受人に相殺の主張ができるかどうかについて、改正前は、民法に明確な規定がありませんでした。もっとも、最高裁は、譲渡通知を受ける前から譲渡人に対して反対債権を有していれば、譲受人に対して相殺を主張できるという判断をしていました。
改正後は、まず、この判例ルールを条文化し、対抗要件が備わる「前」に譲渡人に対して取得した反対債権により、譲受人に対して相殺を主張できるという改正がされました。つまり、この点については、条文化されただけで、実質は変わらないということです。
他方、改正により、対抗要件が備わった「後」に譲渡人に対して「取得」した債権であっても、対抗要件が備わる「前の原因」に基づいて生じた債権などについては、「他人の債権」を取得した場合を除いて、相殺を主張できるとされました。したがって、この点については、改正前よりも相殺できる範囲が広がったと言えます。
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