2020
May
23
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《宅建試験対策13》譲渡制限特約(債権譲渡)に関する民法改正
≪改正されたポイント≫
a)改正前の民法では、債権者と債務者との間で、債権譲渡を禁止するなどの譲渡を制限する特約をしていた場合、原則として債権譲渡は「無効」(譲渡自体の効力を認めない)であり、例外として、譲受人が、譲渡制限特約について「善意かつ無重過失」であれば、債権譲渡は「有効」になるとされていました。
しかしながら、改正により、譲渡制限特約があった場合でも、譲受人の認識(善意・悪意・過失の有無)と関係なく、債権譲渡は「有効」となります。
ただし、せっかく譲渡制限特約を定めた債務者の保護のために、譲受人が特約について「悪意または重過失」である場合は、債務者は譲受人に対して履行(支払いなど)を拒否できることになりました。債権譲渡自体が「無効」になるのではなく、譲渡は「有効」で、債務者が譲受人に「履行拒否」できるという仕組みに変わったところがポイントです。
ただ、こうなると、債務者が、新しい債権者(譲受人)にも元の債権者(譲渡人)のどちらにも履行をしないという事態(いわばデッドロック状態)が生じます。そこで、このような事態にならないように、譲受人が、債務者に対して、元の債権者(譲渡人)に履行するよう催告し、それでも債務者が履行しなければ、債務者は新しい債権者(譲受人)からの履行を拒めなくなるという規定も設けられました。
なお、譲渡制限特約に反した債権譲渡も「有効」になるという改正ルールの例外として、「預貯金債権」については、譲受人が特約について「悪意または重過失」であれば(実際上は、預貯金債権なので、少なくとも重過失は認められると思われます。)、債権譲渡自体が「無効」となることも知っておきましょう。
b)譲渡制限特約のついた債権が強制執行により差し押さえられた場合、改正前の条文には何も規定がありませんでしたが、最高裁により、債務者は、差押債権者に対して譲渡制限特約を対抗できない、つまり、強制執行を「拒めない」とされていました。
改正後は、この判例ルールが条文で規定されることになりました。判例ルールと同じ内容にするという改正ですので、実質的な変更はありませんが、知識として押さえておきましょう。
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