2020
May
09
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《宅建試験対策11》保証契約の効力と保証人保護(多数当事者の債権・債務)に関する民法改正
≪改正されたポイント≫
a)主債務者が、誰かに保証人になってくれるようにお願いする際に、主債務者の財産状況、主債務以外の他の債務の有無・額・履行状況などの情報について、保証人に知らせなければならないという情報提供義務の規定が改正によって新設されました。
もっとも、情報提供義務が課せられるのは、保証のうち、①事業のために負担する債務(貸金に限らず、賃料債務や買掛債務も含みます)の保証(もしくは事業のために負担する債務を含む根保証)であること、②保証人が個人であること(つまり、法人が保証人となる場合は対象外)という要件を満たしたものだけです。
そして、この情報提供義務に主債務者が違反した場合(つまり、情報を提供しなかったり、虚偽の情報を提供したりした場合)は、債権者が、情報提供義務違反があったことについて、悪意(知っていた)又は有過失(知らなかったが気づけた)であれば、個人保証人は保証契約を「取り消せる」ことになりました。個人保証人からすれば、主債務者の財産状況などを正確に把握していれば保証などしなかったと言えますし、債権者の方もそのことに気づけたという落ち度があるからです。
b)事業のために負担した「貸金等債務」(貸金債務や手形割引)が主債務で、(根)保証人が個人の場合、保証人が公正証書により保証する意思を表明していなければ、保証契約は原則として「無効」となります。
これまで、事業のための借り入れに際し、金融機関などが、事業とほとんど関係のない債務者の身内を保証人とすることが当たり前のように行われていましたが、そのような安易な保証を防ぐための新しい規定です。
具体的には、保証契約を有効なものとするためには、(根)保証契約の締結前1ヶ月以内に作成された公正証書で、保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していることが必要になります。
もっとも、この公正証書によらない事業のための借り入れの保証契約を無効にするというルールには、「経営者保証」の例外と言われるものがあります。これは、主債務者が「法人」の場合は、法人の理事・取締役や過半数株主など、主債務者が「個人事業者」の場合は、共同事業者、事業に現に従事している配偶者などについては、例外的に公正証書がなくても保証契約が有効となるというものです。実質的に主債務者の事業の経営に関わっていると評価できる者については、公正証書によらない保証契約を認めても問題ないという考え方によるものです。ちなみに、この例外にあたる場合、「公正証書が不要」になるだけですので、経営者保証であっても、保証契約である以上、口頭での契約は当然効力をもちません。
c)保証の中には、「根保証契約」と呼ばれる「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」があり、例えば、信用保証、賃貸借契約の保証人、入院保証、雇用契約の身元保証などのことをいいます。
改正前の民法では、主債務の範囲に「貸金等債務」(貸金債務や手形割引)が含まれる個人による根保証契約については、「極度額」(保証する限度額)を定めない場合、契約は無効になるという規定がありました。
しかしながら、この規定は、あくまでも、「貸金等債務」だけを対象としていますので、そうではない債務(例えば、売買代金債務や不動産賃借債務など)の根保証契約については、極度額を定めなくても有効とされていました。
そこで、改正法では、「貸金等債務」以外にもこのルールを広げ、「個人の根保証契約全般」に極度額ルールが適用されることになりましたので、極度額の定めがない「個人根保証契約」は広く無効とされます。
そのため、例えば、賃貸住宅における賃借人の連帯保証についても極度額ルールが適用されることになり、保証人が責任を負う極度額を定めなければならないことになりましたので、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」もそれに合わせて改定されました。
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