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《宅建試験対策8》債務不履行に基づく損害賠償請求(債権の目的・効力)に関する民法改正

債務不履行に基づく損害賠償請求・表1債務不履行に基づく損害賠償請求・表2

≪改正されたポイント≫

a)債務不履行に基づいて損害賠償請求する場合に、対象となる損害の種類としては、①通常損害(その種の債務不履行によって通常生ずるような損害)と②特別損害(通常生じるものではないが、今回は特別の事情があって生じた損害)の2つがあります。

 このうち、②の特別損害については、改正前の条文では、当事者がその事情を「予見し、又は予見することができたとき」は賠償を請求できるとなっていました。

 しかし、改正後は、当事者がその事情を「予見すべきであったとき」は賠償を請求できるという表現に変わったことから、予見できたかどうかという「予見可能性」ではなく、予見義務が認められるかどうかがポイントになりました。細かな違いではありますが、改正後の「予見すべき」という規範的な表現を覚えておきましょう。


b)債務不履行に基づく損害賠償請求の場面で、債権者に何らかの落ち度があった場合に、過失相殺により損害賠償責任や額を定めることになります。

 この過失相殺で問題とすべき債権者の過失の範囲(債権者のどのような種類の落ち度まで含むか)について、改正後の条文では、対象となる範囲を、債務不履行自体だけでなく、債務不履行による「損害の発生若しくは拡大」に広げました。つまり、債務不履行そのものには債権者の落ち度がなくても、損害を発生させたり、損害をより大きくさせたりした点について債権者に落ち度があれば、その点も過失相殺の対象となるということです。

 もっとも、改正前も、解釈としては、損害の発生や拡大に関する過失も過失相殺の対象に含めるべきとされていましたので、実質的な変更とまでは言えませんが、条文上の変更があったことは押さえておきましょう。


c)契約当事者間において、債務不履行の場合の損害賠償の額をあらかじめ決めていた(損害賠償額の予定)場合、改正前は、「裁判所は、その額を増減することができない」という規定がありました。

 しかし、この規定に反して、予定された賠償額が高額すぎる場合などに、具体的な妥当性の観点から、金額の調整を行う裁判例もあったことから、改正によりこの規定は削除されました。

 もっとも、この規定が削除されたからと言って、損害賠償額の予定がなされている場合に、裁判所がこれを全く無視して自由に損害額を増減できるわけではありません。したがって、この改正による規定の削除は、実質的な変更とまでは言えません。

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Author : 上田 孝治(Koji UEDA)

‣2003年 弁護士登録
‣神戸さきがけ法律事務所 代表弁護士
‣宅建試験対策講座 講師
‣芦屋市都市計画審議会 委員
‣国民生活センター 客員講師
‣兵庫県サイバー犯罪対策ネットワーク 特別会員

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