2020
Mar
28
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《宅建試験対策5》時効の完成猶予と更新(時効)に関する民法改正
≪改正されたポイント≫
a)時効期間の進行について、改正前は、①時効の完成を一定の期間猶予する(完成にストップをかける)時効の「停止」と、②それまでの時効の進行が効力を失い、振り出しに戻るという時効の「中断」という枠組みになっていました。
改正後は、まず、これまでの「停止」を「完成猶予」に、「中断」を「更新」にするという用語の変更がされています。
b)改正により、時効の「完成猶予」(改正前の「停止」)となる具体的な場合が、大きく増えました(以下は、その例)。
①「裁判上の請求」(訴えの提起、調停申立てなど)の手続が続いている間は、時効は完成しません。もし、訴えの取り下げなどによって手続が途中で終了した場合は、取り下げと同時に時効が完成してしまうと困りますので、そこから6ヶ月が経過するまでは時効が完成しません。
②「強制執行」の手続が続いている間は、時効は完成しません。もし、取り下げ等によって手続が途中で終了した場合は、そこから6ヶ月が経過するまでは時効が完成しません。
③「催告」(口頭や文書などの方法で、裁判外で請求をする場合)があってから6ヶ月が経過するまでは、時効は完成しません。催告による完成猶予は1回しか効果がありませんので、催告を繰り返す意味はありません。
要するに、催告は、裁判上の請求などをするまでのつなぎとして時効を完成猶予するための方法と言えます。
④「協議を行う旨の書面あるいは電磁的記録による合意」があった場合、所定の期間(例えば、合意から1年経過するまで)は、時効の完成が猶予されます。これは、時効の更新事由である債務についての「承認」まではしていないものの、債権の存否などについて協議には応じている場合に、時効の完成を猶予するものです。
なお、この協議合意を繰り返す場合、当初の時効期間満了予定時から5年を超えない範囲であれば、完成猶予の効力があります。
c)改正により、時効の「更新」(改正前の「中断」)となる事由は、①確定判決等による権利の確定、②強制執行の終了、③承認などとなりました。
③の承認については、改正前後で変わりませんが、①と②については改正により位置づけが変更になっています。訴えが提起された場合を例に説明すれば、「裁判上の請求」にあたりますので、まず、時効の完成が猶予されます(=裁判が続いている間は時効は完成しない)。そして、勝訴判決の確定により、裁判が終了して時効の「更新」となり、時効期間がリセットされ、そこから、新たに時効(確定判決の場合は10年)が進行を開始することになります。つまり、時効の完成猶予事由のうち「裁判上の請求」や「強制執行」の場合、「完成猶予」の後に「更新」という流れになります。
なお、細かい話ですが、仮差押えや仮処分は、改正前は時効の中断事由でしたが、改正後は、単なる完成猶予事由となっており、「更新」はされません。
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