2022
Dec
15
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〔2-2〕 共有物の管理者(共有)~令和5年度宅建試験合格のための新しい民法(相隣、共有、財産管理、相続)の知識~
〔共有物の管理者の位置づけ〕
共有者が多数いるようなケースでは、共有者間で共有物の管理についてそのつど決めることもできますが、いちいちそのような手続きを行うのは煩雑で、特定の誰かに管理を委ねるのが現実的な対応と言えます。また、例えば、共有となっている建物の管理を不動産管理会社に委託する場合には、管理会社への委託について共有者全員の同意が必要であるとも考えられますが、改正前の民法には、共有物の管理者に関するルールは定められていませんでした。
そこで、改正法では、共有物の管理者に関する規定をおき、管理者の選任・解任については、各共有者の持分価格の過半数で決めることができることになりました(252条1項)。
〔共有物の管理者の権限〕
共有物の管理者は、共有物の管理(軽微変更を含む)に関する行為をすることができますが、共有者全員の同意を得なければ、軽微変更以外の変更をすることはできません(252条の2・1項)。
また、共有者やその所在が不明の場合に、裁判所は、共有物の管理者の請求により、それ以外の共有者の同意を得て共有物に軽微変更以外の変更を加えることができる旨の裁判をすることができます(252条の2・2項)。
〔共有物の管理者の職務〕
共有物の管理者は、共有者が決めた共有物の管理に関する事項に従って職務を行わなければなりません(252条の2・3項)。そして、共有物の管理者がこれに違反して行った行為は、共有者に対しては効力を生じませんが、共有者は、このことを善意の第三者に対して対抗することができません(252条の2・4項)。
したがって、例えば、共有者間での取り決めに反して管理者が第三者に共有物である土地を賃貸した場合、その第三者が共有者間の取り決めた内容について善意であれば、第三者は適法に土地を使用していることになりますので、共有者が、その第三者に対して土地を使わないように求めることはできません。
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